曲直瀬道三 「養生誹諧」より

 カテゴリー「智慧に学ぶ」では、古今東西の資料の中から私達が「なりたい自分に
なる為」の智慧の一部を抜粋し、皆さんとご一緒に拝聴・拝読させて頂こうと思います。

 今日は、室町・安土桃山時代の医師、曲直瀬道三(まなせ どうさん:永正四年~
文禄三年:1507~1594)の「養生誹諧」です。

<文武>
 かねてより 身をつつしむハ 文の道 病でくすすハ 物のふのわざ (2)

  常日頃から病気に罹らないように体をいたわるのが学問や芸術を究める道であ
 り、病気になったら、病を治す術を心得ておくのも武士たる者のつとめである。

<保胃>
 食ハ只 よくやハらげて あたたかに たらハぬ程に 薬にもます (6)

  食べ物は、よく温めて柔らかく調理するといい。そして、食べ過ぎず足りないくら
 いの量の食事は薬以上の効果がある。

<四休>
 さむからず 飢ることなき たのしみハ たる事を知の さひハにぞかし (9)

  寒さも飢えも凌げる程度の生活が、人生の楽しみ、幸福に浸るにはちょうどよ
 い。足ることをしったほどほどの生活が何よりだ。

<湛浩>
 老いぬるハ 立てミ居てミ 身をつかひ 心ハ常ニ やすむるぞよき (10)

  歳をとったら、立ったり座ったりして身体を使い、心はいつもやすらかにしてい
 るのがよい。

<和中>
 常の食 四時に順じ 五味を和し 飽ニ及バず 又ハうゑざれ (11)

  日頃の食事は、季節に応じて旬のものを味付けも適度にして、かたよらず食べた
 いものだ。食べ過ぎはいうまでもなくよくないが、、腹の減り過ぎもよくない。

<勧懲>
 性をわれ 常ニすなほに ためなをし よきを志たふや 養生のもと (12)

  自分の正確や生活が正しくなかったら、曲がったところを直して、健全な精神を
 獲得するのは養生のもとだ。

<不薬>
 何となく 形と心 つつしめばバ 薬なくても ゆらく玉のを (13)

  身体のことを常に気をつけ、いたわって、心おだやかに、ふつうに生活していれ
 ば薬の世話にならなくても、楽しく長生きできる。

<順レ衣>
 水にぬれ 汗にうるおふ 衣かえ また夏冬ハ よき程にせよ (17)

  水に濡れたり、汗でぐっしょりとなった衣服はすぐに着替えよ。また、夏や冬や
 、暑さ、寒さに適した衣服を身につけなさい。

<弁医>
 医しをハ 兼て手がらを わきまへて それを親しミ 脈も見すべし (18)

  日頃、医師の力量を知っておくべきだ。そうしておけば病気のかかったとき、安
 心して診察を受けられる。

<揀択>
 はかなくも 善悪思ふ 苦しミの 何ハにつけて 身を尽くしけり

  はかないものだ、よいこと、悪いことの取捨選択で思い悩むのは苦しく、身体に
 よきこととはいえない。だからどんなことでも悩まずに一生懸命励むのが一番だ。

<汗瀉>
 汗おしみ くだるものいとへ をのが身に それや内外の あるじならまし (33)

  汗も下痢もおろそかにせず、大切なものと考えるのがよい。それが、自分の身体
 の内側と外側から病気を教えてくれる中心になるのだから。

<謹薬>
 効ある 薬にさとれ 何事も なきおりからハ いかがのむべき (34)

  自分に効いた薬が何か知っておくべきだ。病気でも何でもないときはどうして飲
 もうか、飲むべきでない。

<攣レ筋>
 ゑせ馬と つよ弓すまふ ちからわざ 積れハ筋の 中風とぞなる (36)

  無理な労働が重なれば筋肉を傷め、ひいては健康を損ねるぞ。

<怨他>
 医しせめ 効をいそぐ 身の病 作り出せる 我ハうらミず (44)

  患者は医者を責めて、早く治せしてくれとせかすが、その原因を作った自分のこ
 とは棚にあがている例が多いものだ。

<以レ怖治>
 なへて人 胸の思ひハ 乱碁の 死するをこうに たててやむべし (46)

  耐えがたい万難の苦しみも、死を覚悟すれば立ちなおることができるものだ。

<預謹>
 さしも草 もゆる思ひと 針薬 くるしまんより かねて謹しめ (53)

  お灸をして熱い思いをしたり、鍼を打って痛い目をして苦しむくらいなら、ふだん
 から身体をいたわっておくのがよい。

<禁レ久>
 いねをきも 起居見聞て 行事も 皆久しくて 病とそ成 (65)

  行住坐臥、起居動作はすべててきぱきとこなせ。のんべんだらりと生活をしてい
 ると病になってしまう。

<持与避>
 をのか身に たもちてよきハ 只たもて 避けてやすきハ 常ニさくへし (112)

  自分の身にとって、良いと思うことはそのまま続け、悪いと感じるものは常に避
 けるよう心がけるべきだ。

<遂レ欲>
 限りある 露の身をもて はかりなき 胸ニまかセバ はやくこぼれん (113)

  はかなく、短い、露のような人の命なのに、何も考えず、思いつくままに欲を追う
 と早く死んでしまうぞ。

<難レ行>
 謹ミを 耳ニ聞分 心にも 得ておこなハぬ 人ハかひなし (114)

  心身をひきしめ、控えめな生き方が大事と、人からきき、心にも留めていても、
 それを実行しなければ何の意味もない。

 ↑以上、各症状に対しての詳しい説明を含めると、道歌は計120にもなるので
すが、ここで「基本」となるものを抜粋しました。

 ちなみに、本書は「毛利輝元」に贈られたものです。

 ご興味のある方は 山崎光夫 著 「戦国武将の養生訓」 新潮新書 をお読み下
さい。

 また、本日は(おまけ)がございます。宜しければお付き合い下さい↓。
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                       曲直瀬道三先生
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by cute-qp | 2008-08-09 00:01 | 温故知新