ヒポクラテスの精神 ~科学性と倫理性~

 常々、医療系のテキストを見て思うのが、「殆ど役に立たない」と言う事。

 「厨房の裏側」を見て改めて「人が治らない、治せない」原因の1つが教育だと気付きました。

 特に、専門学校などにおいては、国家試験が勉強の前提にある為、臨床と乖離した、意味
不明な教材・教育内容が多いように思います。

 そんな中、例外的に、気になったのが「ヒポクラテス法」。

 整復法や包帯法などに出てくる技術ですが、紀元前の医療技術に関わらず、その感性に
ヒポクラテスの凄さを感じ、早速、その経歴や思想を調べました。

 そこで「春風堂の理念」の締めくくりは、このヒポクラテスについてご紹介致します。
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 ヒポクラテスは(B.C460頃~360頃)の古代ギリシアの医師で「医学の始祖」と呼
ばれています。

 当時、ギリシャでは「病気を詳しく分析しよう」とした「クニドス学派」と「病気を患者
の生命全体に発生した現象」と捉えた「コス学派」があり、ヒポクラテスは後者に属し
、「推論と論証(思弁)」や「祈祷」ではなく、「客観的な現象の観察から結論を導き出
そう」としました。

 そして、「生体には身体のバランスを回復させる機能(自然)が備わっている」と考
え、それを「手助けする事が最も大切である」と説き、患者の症状から「分利(回復)
に向かう見通しを判断する」診断を重んじました。

 これがヒポクラテスの「科学性」と呼ばれる側面です。

 また、彼の医学には医療者に求めた「倫理性」に大きな特徴があり、今日の医療
倫理に多大な影響を与えた「ヒポクラテスの誓い」(自身の筆ではないらしいが)は
有名で、「人間愛のあるところに医術への愛もあるのだ」と説いています。
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    十字の形で記された12世紀東ローマ帝国時代の「ヒポクラテスの誓い」の写本

 紀元前に、この2つに言及しているのは凄い!!

 皮肉な事に、ヒポクラテス亡き後、様々な医学学派が乱立し、ヨーロッパを支配する
医学大系をガレノスと言う人物がを統合します。

 ガレノスは国家権力や宗教の庇護の元、特に「キリスト教の教義」と合致した医学を
成立させ、「名声を得ようとする者は、私が全生涯にわたる積極的な研究によって達成
した、すべての業績に精通しさえすればよい」と言い放ちます。

 残念ながら、その言葉通り、以後、約1500年間西洋医学はガレノスの名の元に凍
り付き、当時、「外科学よりも内科学」、「自然科学よりも神学・哲学」が重要視されてい
た事もあって「目の前の事実が、ガレノスの記述と異なっている場合は、目で見たもの
が間違っている」とされ、以後、ヴェサリウスや近代外科の父であるアンブロアズ・パレ
(「我、包帯し 神これを癒したもう」で有名)の登場を待つことになります。

 ちなみに、カソリック教徒によって抹殺されかけたガレノス以外の医術はビザンツ帝
国から東方に伝えられアラビア医学となって行きます。

 「医学史」では有名なことですが、今もこの繰り返しが見えるのは私だけでしょうか?

 そして、私もこの「ヒポクラテス」や「パレ」の道を歩みたいと思いました。
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by cute-qp | 2008-08-01 00:00 | 春風堂の想い