○○には書けない気持ちを生かす

 岡野雅行著「世界一の職人が教える 仕事が面白くなる発想法」より引用・ご紹介致しま
す↓。

 俺がいつも口にする言葉に「雑貨」がある。日用雑貨という言葉があるように、口紅のケース
とかライターとか鉛筆のクリップとかね、要するに昔から町工場が手がけてきたもののことだ。

 日本人には今でも相変わらず、コンピュータ部品がすごくて、がま口のような雑貨をつくるの
なんて簡単だと思っている人がいる。「うちはコンピュータをやっているんだ」と言えば「すごい
なあ」と感心するのに、「うちはあの真鎗の鈴をつくっているんだ」と言えば、「あっそ」 ってね。

 本当の物事が見えていないよな。ハンドメイドの時計が何百万円で、クォーツは千円で買え
るってことの意味がわからない人間もいる。そういう勘違いを直さないと、商売でもきっと損を
してしまうんだけどね。

 あるときにこんなことがあった。

 ある大手電機メーカーに講演に行った帰りに、中国担当の事業部長の人と話をしたんだ。
するとその人が、「今日はいい話をしてくれましたね」と。「どの話?」って聞くと「雑貨の話」
と言う。

 その人は年中、中国に仕事で行っている。それで、「中国語で『雑貨』を置き換えると『完
成された技術』と書くんです。とくに南の地方では『成熟した技術』と書くんですよ」と言うん
だ。

 つまり雑貨は技術的な終着点にあるもので、半導体みたいにどんどん変わっていくもの
とはわけが進うんだ。たとえば鉛筆のキャップにしても、鈴にしても、もうあれ以上変わり
ようのない形をしてるだろう? 進化しつくした究極の形という感じがする。完成されている
というのはそういう意味だ。俺が今まで思ってきたことはやっぱり正しかったと、あらためて
思ったものだ。

 金型だって、樹脂のような一発でできてしまうものならいざしらず、金属製品を何工程に
もわたって変形させてつくる金型は、人の手による微妙な調整がなければ完成しない。

 最後の「もう気持ち薄く」なんていう微調整こそが、本当のキモの部分なんだ。

 だからCAD(コンピュータ援用設計システム)で金型の図面をにいて、図面通りつくれ
ばいいなんてのは、ありえない話なんだ。なんでも「ピッポッパッ」とコンピュータの人力
でできてしまうなんて、勘違いもはなはだしいっていうんだよ。最後は人間のアナログな
、手の力がなければできない。

 なぜだか、わかるかい?いつも言っているんだけれど、「気持ちは図面に書けない」か
らなんだ。だから、図面だけもらっても完成までいけないんだね。

 皆さんの仕事だって、マニュアルには書けない部分こそが、他人にはできない、あなた
だけの発想が生きるところなんじゃないかな。
 金型屋とは関係ない人でも、ここのところをよく理解しておくといいよ。ほかのことにも
応用が利くはずだからね。

 俺が「金型は最初から最後までひとりの人間がやらなくてはだめなんだ」って言う理由
はここにある。"気持ち"は図面に書けない」以上は、ほかの人ではそこがすっぽり抜け
落ちてしまうだろう。だからうまくいかないんだ。

 だからこそ、どんな仕事だって「自分じゃなくても、誰がやっても同じ」なんていうことに
はならないものだよ。
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         今はあまり見かけなくなった「がま口」の留め金部分。留め金を閉
        じるとき、「パチン」という音がする。この「音」がどうすれば出るかは
        、図面には書けない。感覚で覚えていくしかないが、今はこの音を
        出せるようにつくれる職人が減った。

         一見ローテクに見えるが、じつは「完成され、成熟した技術」の結
        晶である雑貨。それをつくってきた経験と、そこから生まれる発想
        こそ、世界一のものをつくる確かなベースになっている。

 ↑以上、引用終わり。

 最近は、どの製造業の製品もCADで設計されているので、例えば、「車」などはどの
業者の製品も対して変わらないフォルムに見えます。

 さて、春風堂が会社員の頃、新入社員研修を航空機の製造ラインで過ごしました。

 航空機はその安全性を非常に重視される為、その金型を作る時、「万分の5インチ」以
上の誤差を許されません。

 そこで最新機などでは最新のコンピュータとソフトで金型の位置関係を計測します。

 ところがなかなか上手く行かず皆さんお手上げ。

 そんな時、もう直ぐ定年の叩き上げの職人さんが金づちで「トン!」...1発で検査OK
となりました。

 また、研究所にいた時期、バリバリの研究者が設計した製品図面を職人さんがチラッ
と観て一言「これ潰れるよ」。

 経験や積み上げ、工夫もさることながら、頭の中に製品イメージがあり、それを形に
出来る凄さを身近で感じさせて頂きました。

 そして...私は「人間の身体」と言う、もっと複雑な存在に向き合うこととなりました。

 その為の「教科書」や「メソッド」はありますが、生きている人の身体や心、そのバラン
スは文字や図面に表す事ができません。

 まだまだ駆け出しですが、「○○に書けない気持ちを生かせる」様私も励んでいきたいと
思っております。
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by cute-qp | 2009-08-27 00:00 | 春風堂の想い