面白い医術書 ~針聞書~

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 ふとした事でみつけた本で、九州国立博物館に所蔵、常設展示されている針灸に関する
東洋医学書として、永禄11(1568)年10月11日、摂津の国(現・大阪府)の住人・茨木
元行によって書かれたました。

 資料的に貴重な医学書ではありますが、病気の元凶となる「蟲」たちの姿とその特徴が
コミカルで、最初、私は「妖怪図鑑か?」と思いました(笑)。 

 本書は4部構成から成り、

 1、針の基本的な打ち方、病気別の針の打ち方などを記した聞書

 2、灸や針を体のどこに打つか示した図

 3、体の中にいる虫の図とその治療法(針灸や漢方薬)

 4、臓器や体内の解剖図                     

 特に3で紹介されている「蟲」の図は63点に及び、想像上の「蟲」が上段に描かれ
、下段に蟲の特徴、治療法が記されております。

「馬カン」
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 心臓にいる虫。日がたって起こる。

「陰虫 かげむし」
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 男女和合の時に出る虫(何しに出てくるんでしょうね?...カンディンスキー風)。

「亀積 かめしゃく」
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 傘のような物をかぶり薬をブロックする。飯を食べる。野豆を食べると退治できる。
(傘では野豆がブロックできないのか...)

「肝積 かんしゃく」
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 肝臓にいる虫。酸っぱい物が好きで、油くさい物が嫌い。常に怒っているような顔
の色である(常に怒っているのが可愛らしい)。

「肝虫 かんむし」
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 大悪虫。からいものが好き、背骨のある寄生虫。人の中で「そり」という病気を起こす。
木香(もっこう)、白朮(びゃくじゅつ)で退治する。

「気積 きしゃく」
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 油気の物を好み、魚や鳥も食べる。虎の腹を食べると退治できる(「虎の腹」って?
...しかも、それを手に入れる為に死にそう)。

「蟯虫 ぎょうちゅう」
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 庚申の夜に体より出て閻魔大王にその人の悪事を告げる虫(是非、手なずけたい)。

「コセウ」
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 物を言う虫。傘をかぶり薬を受けない。胴は蛇のようで、ひげは白くて長い。甘酒が
好き(甘酒を飲みつつ、何を語ってくれるのだろう?...でも、くだを巻きそう)。

「血積 ちしゃく」
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 病をした後、胃にいる虫。縮砂(しゅくしゃ)をかければ退治できる。

「肺虫 はいむし」
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 肺にいる虫。飯を食べ、人玉にも変わる。白朮(びゃくじゅつ)で退治できる。

「脾積 ひしゃく」
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 脾臓にいる虫。甘い物が好きで、歌を歌う。へそのまわりに針を打つとよい(どんな
歌が好きなんだろう?でも、腹中で歌われたらさぞやかましい事だろう)。

「脾臓の虫1 ひぞうのむし1」
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 脾臓にいる悪虫。飯を食べる。木香(もっこう)を飲むと退治できる(岡本太郎画伯
ばりの虫)。

「脾臓の虫2 ひぞうのむし2」
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 脾臓にいる虫。食べ物を受けたり受けなかったりして、人がやせたり太ったりする。
阿魏(あぎ)・我朮(がじゅつ)で退治できる(出来れば痩せるだけにして欲しい)。

「脾臓の虫3 ひぞうのむし3」
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 脾臓にいる虫。筋を捕まれると、目まいを起こして頭を打つ。木香(もっこう)・大黄
(だいおう)で退治できる。

「肺積 はいしゃく」
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 鼻は肺の穴である。善悪の臭いが嫌いで、生臭い香りが好き。辛いものが好き。
この虫がいると常に悲しい気持ちになる。針は柔らかく浅く打つとよい。

「腎積 じんしゃく」
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 別名をホントンという。猪の子が走っているような姿をしている。所かまわず歩きま
わっている。この虫が病気を起こすと口が臭くなる。針の打ち方は色々ある(歩き回
られるとそこらじゅうが臭くなりそう)。

「キウカン」
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 肺にいる虫で、食物に向かって起こる。別名を肺カンともいう。虫がこの姿になる
と病気が治りにくくなる(じゃあ、この姿の前を教えてくれなきゃ!)針の打ち方は色々
ある。

「脾ノ聚 ひのしゅ」
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 脾臓にいる虫で、岩のような姿をしている。この虫が起こる時は盤石(ばんじゃく)
の岩の上に落ちるような感じがする。虫がこの姿になると病気が治りにくくなる。針
の打ち方は口伝されている(是非、生き残る為に口伝を聞きたい)。

「腹の虫」
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 この虫は頭が黒くて体が赤い。この虫が体内にいる時は霍乱(かくらん)を起こす
(下痢や嘔吐)。この虫が口から出てきた時に引き抜こうとすると死にそうになり、離
せばまた腹の中に戻り肝臓に巻き付く。呉茱ゆ(ごしゅゆ)・車前子(しゃぜんし)・木
香(もっこう)で退治できる(そうか!こいつが良く腹で鳴いているやつか...)。

「腰の虫」
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 腰にいる虫で、この虫がいると腹を下したり汗が出たり、胸元が苦しくなる。木香
(もっこう)・甘草(かんぞう)で退治できる(コイツ飛ぶの?)。

 そう言えば、マンガで「蟲師」と言うのがありますが、この辺を参考にしておられ
るのではないか?と思います。

 1つ1つの説明を観ますと東洋医学の「陰陽五行説」による説明になっている事が
良く分かります。

 そして、日本では昔から「虫の知らせ」、「虫の居所」などと申しますが、その説明を
「蟲の絵」に託す事で、当時の人にとって疾患に対する「イメージ」が付きやすかった
?であろう事が推測されます。まさに「医術版絵双紙」ですね。

(参考)
 曲直瀬道三 「養生誹諧」より
 曲直瀬道三 逸話 ~望診~
 構図とバランス感覚  ~ 歌川広重を観る ~
 うどんや風一夜薬
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by cute-qp | 2009-06-29 00:00 | 本・CD・映像のご紹介