エネルギーを節約し、より遠く、より早く

 今日は、TI本部のHPより「Swim Farther and Faster by Saving Energy by Terry
Laughlin」 Posted on Jan 12, 2009 を引用、ご紹介致します。

 対訳は私のTIの先輩がして下さました。途中、春風堂なりの注記もいれさせて頂きま
した。少々、長いですがお付き合い下さい↓。

 伝統的な指導方法は、「プル(掻くこと)とキックをせよ」と教えている。TIは、エネルギー
を節約せよと教える
。今回のブログは、その理由と方法を説明するものだ。

 2007年11月号の「誰でも分かる力学」誌に、物理学者とエンジニアが米海軍特殊部隊
のためにスイム・フォイル(泳ぐための翼)をデザインしたとき分かったことを書いた記事が
あった。
 この研究者たちの計算では、人間とイルカとの泳ぎの効率性を比較すると、人間は泳ぐ
とき平均してエネルギーの3%しか使えていない。つまり、エネルギーの97%は前方への
推進力以外のものに使われているということである。

 ちなみに、エリート選手でも効率性は10%未満である。そう、あのマイケル・フェルプス
でも90%以上を無駄にしている。一方、イルカの効率性は80%である。

 このことから我々が学ぶべきは、距離(そしてスピード)を稼ぐためには、エネルギーを
節約することのほうが、身体を鍛えることよりはるかに効果的であるということである
。こ
れに気づくことは、他の何にも代えがたい。

 別の言い方をするなら、エネルギー効率を、そう例えば3パーセントから4パーセントへ
と1パーセント改善するだけで、以前より33パーセント向上したことになる。4パーセント
から5パーセントだと25パーセントの改善である。この程度の改善は、普通10時間から
30時間程度集中して練習すれば達成できる。
 一方、体を鍛えることによって同じ程度に改善しようとすると、何ヶ月もかかることにな
る(しかも、そうしたところで、90パーセント以上も無駄にしている事実に変わりはない)。

 この非効率性は実際上普遍的なものであるが、幸運にもその原因は理解しやすいの
で、解決策も比較的分かりやすくなる。

エネルギー・ロスへの3つの解決策

 Q1 エネルギー問題1:助けて、沈んじゃう!

  実際、沈むということは普通のことなのだ(次に説明するように役に立つものでもある)。

  人間の自然な姿勢では、体の95パーセントは水中にある。体の中で、生まれ持って
 浮力のある部分は胸の空洞である。一方下半身は沈むものである。重力は脚を下に
 引っ張り、浮力は肺を上に持ち上げる。

  その結果の「上り坂」の斜めの姿勢が、体の前部での抵抗を大きく増加させる。

  もっと悪いことに、我々の頭脳はこの沈んでしまうという感覚を生命の危機と受け取る
 ものだから、浮いているためには何でもさせてしまう。この「生き残るための」腕の掻き
 が、はなはだエネルギーを費やすまったくもって非効率なものである。そのうえ、筋肉
 を緊張させ、本来持っている沈む傾向を増幅させることになる。


 A1 利口な解決法1:重力に逆らうな。

  重力は抵抗できない力である。だから、それと闘うよりは、利用するほうがはるかに
 利口である。
水に身体をゆだねることによって利用しよう。そうすれば、もっと心地よく
 もっと楽に動けると発見するはずである。エネルギーが節約できるだけではない。水面
 下(魚が泳いでいるところ)のほうが、水面上(人間が泳ごうとするところ)よりも抵抗は
 少ないのである。その方法は次のとおり。

 1)沈むに任せよ。

  水面に止まっていようとじたばたするより、もっと水平な、つまり抵抗の少ない姿勢で
 沈もう。
浮力のある上半身を水にゆだねるとき、指からつま先まで体の線を伸ばせば
 、少し腰が浮く。初心者を教えているときよく見る光景であるが、重力に逆らうのを
 止めた途端、体の緊張が解け、浮力が一層増加する。この「リラックスして泳げる」能
 力
によって、体脂肪も少ないのにエリート選手の姿勢はすばらしいのである。

 2)頭を「垂らせ」(頭から動くと同意:春風堂)。

  頭の重さを水にゆだねると、沈んで自然に中立の、つまり脊柱と一直線になった
 態勢になる。
これによって抵抗は2つの点で減少する。(ア)頭が沈むともっと腰が
 上がる。そして(イ)頭が胴体と同じ「水のスペース」を通るよう頭を位置させること
 によって、さらに少し抵抗が減る。頭をリラックスさせると、肩と背中の上部もリラッ
 クスしてくる。
これには、様々な効能がある。

   先に「重力に逆らわない」と抵抗が減るのを強調したが、水が支えてくれる感覚は
 、初心者の多くにそれよりももっと大きいインパクトを与える。悲惨な経験が、自信と
 安らぎさらには楽観主義にまで変化するのだ。
それは、あの生き残るために必死
 に動かす手の掻きを壊して、腕と脚をもっと効果的効率的に動かせる自由をもたら
 すのである。
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 Q2 エネルギー問題2:水は壁である。

  自転車競走の選手の「エアロ」姿勢と弾丸と弾丸列車の形から分かるのは、「薄い
 空気」のなかであっても早く効率的に動くには、空気抵抗を減らすことがどれほど重
 要であるかということである。

  さて、水は空気の殆ど1000倍も密度があることを考慮していただいたうえで、皆
 さんは自分が泳ぐとき、掻いて蹴ることに対比して、どれほど「動的ストリームライン
 (流線型)」に思いをめぐらせているかである。抵抗の少ない形は、ナサのロケットから
 バラクーダに至るまですべて共通に「飛行機の機体」の形をしている。前が先細で、
 後ろが流線型である。

  尖った先端が徐々に空気や水の分子を押し分けていき、その後にもっと厚みのある
 部分が続く。先端が尖っていないと、あるいは体が滑らかでないと分子は激しく動き、
 波、水や空気の乱れ、推進力を弱らせる渦巻きを作り出すことになる。

  魚の体は、一体で、バランスがとれており、オシレーション(横から横の動き)やアン
 ジュレーション(波のような前後にうねる動き)によって推進し、水の乱れを最小限度に
 抑えるよう完璧にデザインされている。

  人間の体は、頭と手足が独立し、肩とお尻が出っ張り、肘・膝・踝を曲げることができ
 、水の乱れを最大化するよう殆ど完璧にデザインされている。人間の泳ぐときのスタイ
 ルは、頭を鞭のように振り、腕を風車のように回転させ、脚を猛烈に蹴るもので、それ
 がゆっくりしか泳げず、しかもあまりにも早く疲れることの根本的な原因となっている。
 体力が原因なのではない。


 A1 利口な解決方法:抵抗を最小にする途を行け。

  初めてプールのこちらの端からあちらの端まで泳ぐとなったとき、我々の頭に浮かぶ
 最も基本的な考えは掻いて蹴ることだ。赤十字の訓練で我々が教わったことは、どの
 ようにキックして掻くかだった。このようにフリースタイルに関する伝統的な概念は、「腕
 で掻いて前へ進み、脚で蹴って前へ進む」と要約できるだろう。この概念が上半身と下
 半身を分離する。


 トータル・イマージョンでは、フリースタイルとは「右の体側でのストリ-ム・ラインと左の
 体側でのストリーム・ラインを交互に入れ替えることである」
(骨盤時計の3時9時です
 ね:春風堂)を中核的な概念として、動的ストリーム・ラインを強調している。両肩から
 それぞれ前に平行な「線」が伸びているとイメージする。腕はその線に沿って水に「水
 路」を開けるように突き出し、次いで胴体と脚は一直線となり開けられた水路のなかを
 通って腕を追っていく。動的ストリーム・ラインという概念は、意識の焦点を、水の分子
 を後方に「押す」ということから自分の前の水の分子を「切り分ける」ということにシフト
 させる。このようにすれば、より遠くまでより早く泳ぐことが簡単にできるようになる。
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 Q3 エネルギー問題3:引っ掛かりがない。

  ストリームラインがうまくできていない身体を水の中で動かそうとすると水は「壁」の
 ようになる。しかし一方、後ろに押そうとすると渦を巻いて逃げてしまう。そのうえ、手
 は前に進めようとしている体の大きさに比べれば、ちっぽけなものである。
  水を後ろに押すというのは、「完璧に」できたとしても前に進むうえでは極めて非効
 率である。例えば、スクリューで動く船は外輪船よりはるかに早い。最後に、水を後ろ
 に押すのに使う腕と肩の筋肉は極めて疲れやすい。

  沈む不安定な体、大きい抵抗、引っ掛かりの少なさ、すぐに疲れる筋肉が組み合
 わさると、泳ぐということは「スキーの斜面をペダルをこいで自転車で登る」ようなも
 のである。一番よくても、掻いてキックすることでは殆ど解決にならない。最悪なの
 は、水泳のうまくない人の場合であるが、得られた最低限度の効率性さえも、前や
 後ろ方向でなく、下や横方向など間違った方向に向けられたエネルギーによって
 台無しになってしまう。

 A3 利口な解決方法:体で泳げ。

  テクニックに関する伝統的な考え方(掻いて前に進む「手の専門領域」と蹴って
 前に進む「脚の専門領域」)は、胴体を水の中を引きずられる、動かないお荷物
 として扱ってきた。

  TI方式では、腕や脚ではなく体で泳ぐ。(1)左腕は入水しようと持ち上げられる。
 心の中では、目標への軌跡に沿って手を伸ばそうと狙っている。(2)左の体側は
 回転して僅かに水面上に出る。(3)高くなっている左の腰を使って、左手を軌跡
 に沿って伸ばす。(4)そうすることで、人間魚雷のように左の体側は長く伸びて
 流線型となる。

  考え方を、「前に伸ばした手で水を後ろの押す」から「高くなっている方の体側を
 下に回す」
(重力の従い「沈む力」を推進力にする:春風堂)に変えれば、重力
 、体の重量、共働している体中の筋肉を総動員することができ、驚くほど小さな
 エネルギーで強力な動きを手に入れることができる。「自由」エネルギーを利用
 すれば、我々が言うところの「永久運動推進力」を得られるのだ。
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ストロークの改善を先にせよ

 以上の解決策は簡単そうに思えるかもしれないが、まずどれも本能に逆らってい
ることを是非理解して欲しい
(陳式太極拳も「この身体の使い方は人間本来の使い
方ではない」と解説しています:春風堂)。つまり、体が沈むのに逆らわなかったり、
手で水の分子を切り分けたりすることが本能的にできるような人はほとんどいない。

 第二に、何年も、何も「人間的な泳ぎ」のストロークを繰り返すことで十年にもわ
たって何百万回植えつけられた習慣を変えるのは、簡単でもないし、直ちにできる
ことでもない。そして最後に、これら3つの解決方法はそれぞれ数個の基礎となる
スキルから構成されている。大半の人にとってこれらのスキルは、TIのコーチや
我々が出している独習用のビデオに従って、特定の順番に並べられたドリルやフ
ォーカル・ポイントを忍耐強く、熱心に取り組むことによって初めて獲得できるもの
である。

 ↑以上、引用終わり。

 注記にも書かせて頂きましたが、陳式太極拳でも「呼吸による「張力」の連動は
人が固有に持つ運動ではない」
とあり、それを身につける為、呼吸に合わせ、全身
を協調・連動させて動く練習に取り組みます。

 「センタリング呼吸法」ではこう言った主旨の運動を「神経レベルからの訓練」と
して捉え、「呼吸」をその拠り所として身体の訓練や調整を行っています。


(参考)
 ① 呼吸と伸張
 ② 意拳論 抄 (1)
 ③ "私なり"の解決志向アプローチ
 ④ 神経訓練法としてのセンタリング呼吸法 "改訂版"
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by cute-qp | 2009-05-14 00:00