"バランス感覚”としての"虚実" (1)

 今日は、増永静人先生著「指圧」より引用させて頂き、「バランス感覚」としての「虚実」
と言う捉え方を東洋医学から学びたいと思います↓。

虚実補瀉

 経絡の滞り方を、陰陽に分類したとき、虚実という概念が生れます。虚は正常から欠け
ている状態で、実は正常よりも過剰になった状態です。

 正常を円球とすれば、その球面から欠け凹んだところが虚で、球面よりはみ出したとこ
ろが実になります。
b0159328_1627476.jpg

 横断面で図のように画きますとわかり良いのですが、これが球体のままですと、出っぱ
りはすぐみえるが凹みはみえにくい。
 身体ですと実はコリとか膨隆があってみつけやすいのですが、虚は表面では悪い部分
を隠すように防衛しているので余計見えにくいのです。

 表面から見えにくくて存在するものを虚という?であって、たんなるマイナスではありま
せん。また実というのは直接手にふれやすい実体としてつかめるもののことです。

 このような虚実によろて正門球に歪み(ストレス)のできた状態を病気と考えるのが東洋
医学の立場であって、古典では邪と呼んでいます。

 邪とは牙のように、くいちがっている状態でズレのあることをいうのです。(図B・C)

 ズレとかひずみというのは、絶対的な悪の状態ではなくて、正常からみて相対的なゆが
みがあるにすぎず、しかもそれは正常に戻ろうとするカが内部に働いていることを意味し
ます。
 元に戻ろうとするカが、何らかの原因でヒズミになってあらわれたのが病気の症状で、
そのヒズミの存在を虚実と表現します。

 ヒズミのカを利用して、実に集ったものを元の正しい場所に移す働きを瀉といい、虚の
欠けたものを補充させる働きを補といいます。

 実はカでおせば、そのでっぱりを元に戻せそうですから、瀉というのは刺激療法的な
働きになります。
 何らかの刺激で過緊張状態にある生体に衝撃を与えると、ヒズミで元の球に戻るわけ
です。
 しかし虚は、ピンボン球の凹みを元に戻すようにじっと温めて時間をかけて内部からカ
が充実してくるのを待たねばなりません。

 古典には「虚に気の満ちてくるのを待つのは、たいせつなひとの来るのを期待して日
の暮れるのにも気づかぬほどに、じっと心をこめて待つようでないといけない」と、このこ
とを表現しています。

 実をみつけるのはわりに簡単で、瀉も刺激になればよいので、作用の許容範囲が広
いのですが、虚はみつけにくい上に、じっと時間をかけて内からカの満ちてくるのを待つ
という難しさがあります。

 生体のヒズミのカが強いとき、すなわち実証の体質なれば瀉の作用だけで正常に復
することができますが、消耗性で体力のなくなってきた虚証の病人のときは、的確に虚
を補わないと元の状態に回復しにくいのです。

 虚証の病人に対し、やたらに実を攻めますと、その作用は全体のバランスをこわし、
体力を消耗させ回復をおくらせます。
 これは病気を治すための反応ではなくて、誤治による動揺なのですから、ムリな瀉法
は慎しまなくてはなりません。

 そこでプロになるには、素人には見つけられぬ虚を的確に診断できるだけの明を要求
されるのです。

 陰陽の理論からみても、実は目立って動きのある症状を示すので、ついこれを改めて
早く治そうという気にさせます。
 しかし犯罪の蔭に女ありというように陽の症状をあらわす原因は、陰の蔭にかくれて表
面から見えにくい虚の力にあるのですから、虚を補わないと病気を根本から治すことは
できないのです。

 症状だけを治そうとしたり、直接症状に働きかけようとするのは直線思考であり、これ
に捉われず全体を見わたすことで、裏に働く虚をみつけ、これを補うことでジワジワと全
体から治そうというのが円環思考になるでしょう。

 東洋医学はもともと病気を体質改善によって治そうとする円環思考のタイブであり、西
洋医学は直接病気に働きかけてこれを撲滅しようとする直接思考のタイプになっていま
す。

 しかし東洋医学の中でも、生体に毒である湯液や危害を与える鍼灸を使って、毒を以
て毒を制する式の瀉法治療は、西洋医学に近づきやすいので、現代の風潮にも合って
医学的に理解されやすい傾向がありますが、食養や手技のように温和な養生法的な治
療はなかなか医療的価値を認められにくいものなのです。

 食養や手技は・その温和な性質から,的確な病態の把捉ができなくても危険度が少い
ため、誤治の作用も激しくないので、つい真剣な診断を怠りがちで、そのため民間療法
になって医療に認められにくいのですが、的確な診断さえできて、これに応じた虚実補
瀉を行えば即座に奏効することも少くないので、プロたるものはこの診断の技術にもっ
とカを注いでほしいものです。

 明日に続きます。
[PR]
by cute-qp | 2009-02-15 00:00