"バランス"と"誘導"

 「ひとりでできるアレクサンダーテクニーク」(ジェレミー・チャンス:著 誠信書房)より
引用・掲載致します。

 春風堂の自身の勉強や纏めの一貫ではございますが、"バランス"と"誘導"について
皆様の参考にもなるかもしれませんので少々長いのですがご紹介致します↓。

 あなたの先生はあなたに触ります。絶え間なしに。それはどんな感じでしょう?このタ
ッチがどれほど特別なものであるかを示す話があります。
 何年問もわたしは実験として馬にアレクサンダー・タッチをしてみました。実際に、たい
ていの馬たちはこれが好きです-もっとやってほしいといわんばかりに鼻面を寄せてく
るのです。こころ温まる経験です。

 ところが、ひとつだけ変な抵抗をすることを観察しました。アレクサンダー・タッチを嫌が
る場所があってそれは傷をしたところです。

 おかしなことには、その同じ場所も普通になでたりさすったりするのはよいのですが、
アレクサンダー的な意図をもって触れるや否や彼らは引いてしまうのです。
 あたかも彼らは本能的に、こういったアレクサンダー・タッチは内側をひっかき回すの
であって、普通のなでたりさすったりとは異なることを知っているようでした。

 アレクサンダー・タッチは確かにあなたの内側をひっかき回します。それは協調作用の
自動的プログラミングを内側から測定します。
 じようずな先生にかかると、それがあなたとは関係なしに起こってしまうことが感じられ
ます。先生がうまければうまいほど、あなたは考えずにすみます。
 アレクサンダーは晩年、レッスンを終わって出て来るときに、自分の手を見ながら、もは
や生徒に考えさせなくてもよくなった、なぜなら彼の手がすペてをしてあげてしまうから、
といったそうです。

 わたしは長年アレクサンダー教師の訓練をしてきました。はじめて手で触れる練習をす
るようになったときにする、ひとつのレッスンは、生徒に触れる手の三つの使い方を区別
することです。

 一. 聞く
 二. 誘う
 三. 命じる

 これらをひとつすつ分析すると役に立ちます。生徒としても、先生が手で何をしようとし
ているか理解する助けになります。これは特別のものです。

手で聞く

 先生はだれでもこの訓練を受けなくてはなりません-レッスンを受けたことがないひとに
説明するのは困難ですが、たとえてみればこのようなことです。想像してほしいのはあなた
が手で、何かの物体をそれの中心軸によって立たせようとする、図のような場合です。
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 あなたはそれの重さを引き受けずに、しかもそれによりかかるのでもありません。そこで
あなたと物体は別々のバランスを保っています。
 矛盾するようですが、同時にバランスの相互依存関係があります。たとえば、物体がバ
ランスを失うごとに、あなたはやさしく修正します。
 あなたのほうが物体に重さをかけすぎ、それがまた倒れそうになったら、あなたはさらに
それを修正します。
 このような絶えざる修正は、物体のバランスを聞くことによってのみ可能になります。変
化に気づき反作用することが早ければ早いほど、あなたの努力は少なくてすみます。

 アレクサンダー教師はあなたの協調作用をこんな、せつに聞く訓練を受けています。あ
なたの協調作用に絶えず起こっているバランスの変化について無数の情報を受けとります。

 そしてその情報にもとづいて、彼らの技術の第二の側面を活用させることになります。

手で誘う

 第七章にくわしく書いてありますが、からだのいろいろな部分は、立っているときにも、い
ろいろな方向性をもって動いています。

 立つということは、調整と再調整のプロセスをともなう動きなのです。

 チャールズ・シェリントンというノーベル医学賞をもらった二十世紀初頭の生理学者がい
ました。彼はアレクサンダーの仕事に好意的な発言をしていましたが、かつてこんな指摘
をしました。
 「立つことをしているヒトは絶えず破局の絶壁にいる」というのです。よちよち歩きのはじま
りを見ればそれの真実がわかります。それはアメリカのモダンダンサー、スティーブ・パク
ストンがいったように「内なるダンス」です。

 というわけでアレクサンダー教師の手が耳を傾けているのは、あなたの絶えざる内なる
ダンスです。
 あなたの頭が後ろへ落ちます、首がめりこみます、胸が屈み、腰が反ります、お尻を前
に突き出し、膝を固めます、といったようなことです。
 これらの大きな動きのなかの徹妙なパリ工-ションについて巧まだひとこともいっていま
せんが。

 あなたが現在やっている協調作用のパターンがわかったら、こんどは先生は手を使って
直接あなたの神経組織に話しかけます。そして異なった種類の内なるダンスヘと誘います。

 それほど下向きの圧力をかけたり、緊張をしないですむような種類のダンスです。これは
複雑な誘いです。

 というのも、毎秒ごと何千何百万の運動ニューロンが絶えず変化しつつある何千何百万
の状況に反応して、何千何百万の筋腺維を興奮させているのですから。
 そのなかでアレクサンダー教師の手が何かいわせてもらえるなどとは驚くべきことです。
 アレクサンター教師がこの基本的技術を身につけるだけでも三年間の訓練がいります。

 なぜ先生は普通にことばで協調させるように言ったらよさそうなことを、手で誘うのでしょ
うか?手で触りまくったりするより、そのほうがずっとかんたんではありませんか?

 実際に、良い先生はそのようにします。ただし、手を使ってあなたの内部に先生が経験し
てほしい感覚を引き起こした、その後でします。
 この理由はかんたんです。あなたの協調作用は「あなた」が起こしているのでは、ありま
せん。というのは、考えてごらんなさい。あなたはほんとうに支配してはいない、あるいは
感じてさえいないのです。
 毎秒ごとに微妙な変化が、あなたの頭、首、胸、墓、腕、脚とアゴで起こりながら、あなた
はこの本を読んでいるのです。

 これらすべてが今起こりつつあることを感じることができますか?もろろん、できません。
 何が起こっているかはまったく知らないのです。実際、アレクサンダーはこういいました。

 「わたしたらが自分の状態を知らないでいるのは、イヌやネコが自分を知らないの
と同種だ」(アレクサンダー)


 何かがこの内なるダンスをみちびいていますが、それが「あなた」でないとしたら、それは
だれでしよう?それはあなた以外のだれでもありませんが、たいていの場合に自分だと思
っている意識的な自分ではありません。
 この内なるダンスを操っているのは大脳皮質よりも意識下のセンターによるもので、脳幹
神経節、中脳、後脳などの恐ろしげな名前がついています。
 幸いにも、これらのセンターは暗示を受け入れますから、アレクサンダー教師の手の誘い
によって統合的にダンスしてくれるのです。
 もしこれがうまくいって、あなたも先生の手の誘いとうまく協調すれば、まもなくからだの変
化を感じます。これをあなたに経験してほしいと、アレクサンダー教師は誘うのです。

手で命令する

 先生の手があなたの気をひくことができなければ、あなたは動くはずがありません。です
から、あなたの協力がどうしても必要なのです。

 アレクサンダーの手がもっていたほどの能力のある先生は、世界中にほとんどいません。
アレクサンダーは片手をあなたの頭のてっペんにおいて、イスからあなたを文字通り引っ張
り上げて立たせることが、彼の手にある方向性により、できたのです。
 それは(伝えられるところによると)まったく奇跡のように生徒を空中に吸い上げる感じで、
そのひとはどうしようもなかった、といいます。

 わたし自身はいまだにそのような経験はしたことがありません。しかし先生の手がほんとう
に効果的なときには、たしかにあなたの協調作用に何をするかを命じます。
 その結果あなたは何もしないみたいなのに、あなたのからだが変容しているのに、ただた
だ驚くのみでしょう。これはほんとうにすばらしい感じなので、多くのひとびとがレッスンをや
められなくなるのです。

 しかし命じる手は押しつける手にもなりますから、これはわたしの教師養成コースで警告
していることでもあります。

 教師があなたを操って、教師があなたにとって正しいと感じるパターンに入れてしまうこと
は、それはど心地よい緯験ではありません。アレクサンダー教師と詐称するひとたちはたい
ていこのようにやります。
 それらしくは見えるけれど、自分自身ではなくなるようなレッスンは避けるほうがよいのです。
 このことはまた先生があせるとか、偉そうにするとか、正しいことを知っていると思い込んで
いるときにも起こります。それはあなたが判断しなくてはなりません。

 レッスンは具体的に得ることがなくては、続きません。

 問題の核心は、よい先生はあなたにとって何が正しいのかは知りません-それは言いすぎ
ですが、悲しいことに、それを知っていると思いこんでいる各種の施術者たちがあまりにも数
多くいます。
 わたしたちアレタサンダー教師が知ることは、あなたにとって何が利益にならないかという
ことです。アレクサンダーはいいました。

 「自分がまちがっていることを知ること、世界中でわかることはこれだけだ」
(アレクサンダー)


 まちがったことが起こらないようにやめることの学習から、行動への正しい方向が解放され
てきます。
 このために先生の手が直接あなたの運動系に話しかけます。同時に先生のことばがあな
たの意識に訴えます。
 すると先生と生徒の両者が、不適切な動きのモザイクが起こるのを防ぐことを、いっしょに
学びます。
 いままではこれらもろもろの動きがいっしょになって不協調作用を引き起こし、それであな
たはレッスンに来たのでしたね。
 わたしの先生のマージはいったものです。「あなたが獲得するのは、いままで持っていた
ものの喪失です」。

 そして破女の自がキラっとするのです。
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by cute-qp | 2009-01-17 00:00