佐川先生語録 (1)

 お年始の特集、最終日は、津本陽先生著の「孤塁の名人」より佐川先生のお言葉
を引用・掲載させて頂きます↓。

「手」

 合気揚げでは手首に気力を集中する。合気道では親指のつけねに力をいれろ
というが、それでは手が離れてしまう。

                        ○

「小原君、けっこうカあるよ。しかし私が指をひらくだけで、彼は力が抜けてしまう。
手を持たせてからであろうと、持たれた瞬間であろうと、できるのだ。すぐ動くという
のが、実は一番大切なところなんだよ」先生はまず第一に足腰だとかさねていった。

                        ○
 木村氏が聞いた。

「先生の手は、ほんとにやわらかいですね。私はいくら力を抜いても、手が張って
るみたいで、先生のようにならないんですが、どうすればいいでしょう」

「ふだんからカをいれて、固くしているんじゃないのかい」

                        ○

「皆、手首が固いのだ。手が棒のようになっているね。そういう手で刀を握れば、
百姓剣法とかやくざ剣法とかいわれるよ。私は手首返しで、相手のうしろから首を
切ってしまうからね。

 君たちは、私が以前から手首を強くやわらかくしろといっているのに、まったく聞き
流しているようだ。才能のある人だったら、私が手首が大事だといえば、そこでピン
ときて鍛練に徹するはずだがね。

 武田惣角先生に手首をつかまれたら、二貫目(約七・五キロ)ぐらいの重さがずし
りとかかったような感じがしたものだ。そんなのにつかまれたら、君たちはどうする
つもりかね。」

                        ○

「私は手の先に力を集中させるために、ほんとうに苦労した。工夫してやらないと、
いまのようになれなかった。非常にむずかしいことだったね。

 手先に力を集めるということは、体の他の部分の力をすべて抜かなければなら
ないことだからね」

 相撲で突っ張りの得意な力士がいるが、せっかくさかんに突いても、腰が動きな
がらやっているので見かけほどの効果が出ない。腰をしっかりさせる訓練をすれば
、もっと手先に力が入り、破壊力が増すと、相撲好きの先生はいった。

「鍛錬」

 「若い頃は鉄の棒をつくらせたり、鉄パイプの槍をつくらせたりして無茶な稽古
をしたから、脊椎の骨がくっついてしまって、痛めたときもあったね。担ぎの技
なんかできなくなってしまった。

 坐ってやれば腰を痛めないで済むと分ったのは、七十歳になってからだから
、ちょっと遅かった」

 木村氏はたずねた。
「私もやったのですが、小原さんに筋肉が固くなっているといわれて中断してい
ます。やっぱりやったほうがいいのでしょうか」

 先生は答えた。
 「やってもいいし、やらなくてもいい。もっとも合気の原理を知る前に力をつけ
すぎると、よくないかも知れないね」

                        ○

 「いまは一日一時間ほど鍛えているが、昭和五十二年頃までは毎日二時間半
ほどやってきた。といっても、かならずしも二時間半もぶっつづけにやるのでは
ない。仕事をして、そのあいまにやったりした。

 いまは不整脈なのだが、若いときあまり稽古して肉体を使いすぎたから、しか
たないですね。理がわからなかったし、何をどうやったらどういうふうになるかわ
からなかったし、暗中模索だったからね。
 鉄棒を振ったのなんか、背骨や腰を痛めてよくなかった。腰をいためないため
には、坐ってやればよいのだ。もっとも六年ほど前にそれに気づいたのですがね」

 木村氏がたずねた。
「四股二千回ぐらいやると、腰が痛くなるのですが」

 先生は答えた。
「やりすぎてはいけない。腰や背骨は大切です。昔の人は理がわからず、夢中で
やったから早死にしたでしょう。山岡静山など、重い槍を持ってやたらとやるから
、体をこわして早く死んでしまったでしょう」

                        ○

 正確に技をきめるには、腹をつくらねばならない。

 下腹にカをいれると前に出られない。手もはたらかない。動きのなかで中心と
なる腹をつくってゆくには、腹筋、背筋を鍛え、腕立て伏せをやるのがいいと、
先生はいう。

                        ○

 「木刀の素振りは、やはりまっすぐ撮るのでしょうか」

 「まあそうですね。りきまず、まっすぐ大きく。小さくやると固まってしまう。肩に力
がきては絶対にいけません。多くの人は、そうやって固めてしまうからいけない」

 「指はどうやったら太くなるのでしょう」

 「素振りをやっているうちに太くなるでしょう。私も三十歳ぐらいの頃は細かったの
ですよ」

 「なんのために素振りをやるのでしょう。特に手首の力をつけるとか」

 「たくさんやると、それなりにいろいろ気がついてくるのです。それが大切なのです。
剣でも身近なところからパッとあげると、皆びっくりする。訓練でいろいろなことが
できるようになる。

 しかしそれは体作りであって、それをいくらやっても合気ができるわけではない。
それは別だ。私に手をとってもらったときに、いろいろ感じなくてはいけない。

 私は武田先生に投げられて、いろいろなことに気づき、わかった。そのくらいす
るどくなくてはならない。

 小原君は凄い気力だった。戦いでは精神力が大切で、そうでなくてはだめだ。

 ↑以上、引用終わり。

 今まで発刊されている佐川先生の本と照らし合わせてみますとなかなか興味
深いか?と思います。

 ちょっとこれまでの本から受け取れる表現が変わり、それらの著者の意図?を
それとなく感じます。如何でしょうか?

(参考)
 ブログ「センタリング呼吸法」より
 ”指を使う”
 ”体全体が呼吸をする”
 ”合気道の奥義”
 ”合気の定義”
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by cute-qp | 2009-01-08 00:00 | 温故知新