平田内蔵吉先生に学ぶ (2)

心身の中心-バランス

 治病の根本原理は、疾病によって失われた身体の平衡を回復することである。

 元来疾病と云うことが、身体内部の器官と外部の運動器官との平衡が失われたこ
とである。
 内外の器官が調和平衡して、身心の中心がしっかり定まっておれば疾病は断じて
起らないのである。
 身体は様々なる方法で、どこから見ても中心を保ち得るように出来上った器官で
ある。

 この中心が色々な原因で破れて疾病にかかった場合には、それを個々別々に分
析的に診断して治療するよりは、中心がどういう風に乱れたかと云うことをよく観察
して、その中心の回復法を講ずることが一番である。

 しかし私らの云う中心は身体だけの中心ではない。心身の中心である。

 (次項)

 吾々は吾々の中心生活法の第一段階として、先ず自己の身心をつかまねばなら
ないのである。

 生活の中心は金でもなく家でもない。生命である。そして今の日本人で真の健康
者は数える程しかないのである。吾々は国家のためにどこ迄も中心健康術の真義
を徴底したいと思う。

 (次項)

 生命中心を得れば、続いて家も、経済も、国家も、世界も中心を得て来るのであ
る。
 吾々は、中心生活を知るためには何うしても先ず中心健康術の道に入らねばなら
ない。

脳髄の中心-脳幹

 而して、本書に述べる処を簡単に言えば、『身体の中心と脳髄の中心を、一つに
貫いて身体を鍛練すれば、極小の場所、極小の時間、極小の回数、極小の時日
で、無費用、無機械、無条件で、極大の効果、極大の体力、極大の気力が必ず
得られる。

 (次項)

 一、最も有効なる体育の方法は、一切の精神作用の中心的部位たる脳幹視神
経床の部分と、身体全体の中心的部位たる腰と腹の中央部とを、姿勢、両足の踏
付より起る物理的反動カ、或は横隔膜呼吸より起る正中心腹圧より起る物理的の
力を用いて、一如一貫的に連絡せしめつつ、気合をもって武道全般に通じ、且一
切の体操の基本となるべき型を朝るに走ること。

 二、身体全体の中心部は、腹壁にも無く、腰にもなく、その両者の中央部にある。
故に普通では中心部は感覚的に掴めないが、正しい正中心腹圧を起し、更に正し
い足の踏付から起る反動力の刺激を繰り返して与えて行くと、終にはっきりと正中
心感覚が誰にも分ってくるようになる。
 そして正中心感覚が強くなるに比例して、脳幹、視神経床部の内部感覚が段々
判然して来て、その結果は、最も徹底的な精神統表、思考、感情の助けをからな
いで自然に誰にでも出来るようになる。

 三(省略)

(春風堂:「クレニオ・セイクラル・セラピー(頭蓋仙骨療法:CST)」や気功の「洗髄
経」辺りと合わせてお調べ頂くと面白いかもしれません。

脳幹覚醒の原理

 腰も腹も、充分鍛練できていても、横隔膜が強靱、充分に圧下しなければ、これ
も意味がない。

 腰と腹の力は只支えるだけの力として働くので、脳幹から出た迷走神経の末端
と、交感神経の最大の節と薦骨神経(これも脳幹から出ている)の末端とが…に
なっている身体の重心部に向っての、強大な圧下腹圧刺激は、ただ横隔膜の圧
下によってのみ起るのだ。

 そして、横隔膜の圧下は、強大な逆式呼気が加速度的に行われる時に、完全に
行われるのだ。

 腰と腹に等量の運動感覚が起って、充分な横隔膜の圧下によって起る、腹圧を
支える準備が出来たところに、加速度的の呼気作用と共に、横隔膜がウンと圧下
されると、重心部にグアンと、ぶつけるような腹圧刺激が叩きつけられる。

 そこでその部の迷走、交感両神経の中枢たる脳幹の覚醒が起るのだ。

 脳幹の覚醒が起ると、人体の生理作用-勿論そのうちには精神作用も含まれる
が、統一されるのだ。

(中略)

 全く、腹とか腰とかいうのは、外部感覚的で、実際生産力錬磨の中心は、腹でも
腰でもない。

 腰と腹の中心にある。

 腹部内臓の中心にある植物神経の錯綜部にあるのだ。ただ、そこは強烈な圧下
腹圧刺激によってのみ覚醒するが故に、その腹圧を起す手段として、一定の姿勢
が必要なのだ。

 その姿勢には、腰および腹の筋肉が当然関係してくるだけだ。

 さらに、腰と腹の中心の植物性神経錯綜部の覚醒も、結局それによってのみ、脳
幹が覚醒するからだ。

 目的は、ただ脳幹の覚醒なのだ。

 キャノン博士は、脳幹をパトスの中枢と規定したが、話はもっと細かく進んでいる。
 脳幹の中心はパトスの中枢でなく、むしろロゴスの即ち、大脳半球自体の統一作
用の中枢だ。
 分りやすくいえば、大脳半球のロゴス的働きは、脳幹の作用によって可能なのだ。

 脳幹は覚醒だけでは強くならぬ。無枕、仰臥、夜はぐっすり眠れ。昼間も一切の
観念を棄て、時々脳幹を休ませよ。天才とは自然発生的にこれをやっている人間
にすぎない。
[PR]
by cute-qp | 2008-12-23 00:00