背中の感覚 (2)

 昨夜に引き続き、「背中の感覚」について齋藤孝先生の著作より引用・ご紹介致します。

 背筋を伸ばしなさいと言うと、肩にカが入ってこわばらせてしまう人が多い

 臍下丹田の後ろの背骨の一点つかむのに最適なのは、おんぶである。

 おんぶをすると、重心下げてしっかりと腰を入れつつ、背中開いていく感覚
すぐにつかめる

 私は小学生の授業で、よく二人一組でおんぶをやってもらうが、いまの子どもたち
はおんぶが非常に下手だ。背負うほうはからだ前に折れてしまい、体勢維持で
きない
下半身が実にふらふらよろよろしている。

 背負われるほうも、乗り方知らない。すぐにずり落ちてしまう。腰骨の上乗る
ようにして背中ぴったりくっついてからだを預ける」ことを知らないから、相手
背中と自分とがⅤ字のように離れてしまう。時々、後ろにひっくり返ったりもする。

 おんぶに限らず、二人一組の背中伸ばしや、互いに背中をくつつけて坐ったところ
から、呼吸合わせて立ち上がるといった背中系のゲームが不得意な子が多い。

 人を「おぶう」ことだけでなく、子どもたち自身、「おぶわれて」育った経験がない
で、慣れるまでに少し時間がかかる。

 最近はお母さんたちが、子どもをおんぶしている姿を見かけることも少なくなった。
 背中で子どもを感じ取る感覚が、のほうにも育たなくなってしまった
いえる。

 (中略)

 また、もともと日本では、荷物を運ぶ基本的手段として「背負う」という身体習慣
日常生活のなかに張り付いていた

 「背負う」「担ぐ」。「背負子」という長い木枠の上に、頭よりもはるかに高く上手に
荷物を積み上げて背負う腰と背中で背負い、足を踏みしめ、背中、腰、足の真の
感覚と、全部後ろ側でつながっている


 背面で身体の軸をつくる。その支えは肚にあるという姿勢だ。

 中心にした足裏から背中への感覚のつながりが、からだの構え
基本になっていた。腰で重さを支えることができれば、背筋に無駄な
入れる必要はなく、背が曲がることもない

 おんぶする、背負うといった行為を通して日本人が維持していた背中の身体感覚
は急激に失われつつある。日本人は、数百年いや千年単位の長きにわたって、ず
っと背中で子どもを育ててきた民族だ。それを急にやらなくなってしまったことはあ
まりに惜しい。

 実際にやってみるとわかるが、おんぶというものは、にぐっとを入れつつ、
背骨の後ろの一点体重支えるような感覚でやると定する。

 大事なのは、半身の力を抜かないと、相手が身をゆだねにくいということだ。
おぶう側背中ががちがちに固まっていると、おぶわれるほうが心地よくない

 半身はリラックスさせつつ、半身はしっかりと力をこめて安定させる「上虚
下実」
の感覚をつかむ最適のメニューともいえる。

 背中感覚をめぐる日本人の身体文化は、狂言の舞台にも見てとれる。私は
の稽古をして舞台に立たせてもらったことがあるが、背中をかなり意識しないと、
あのような深い幽玄の響きに満ちた声は出ないし、そもそも三方吹きさらしのような
舞台で凛と立つことはできない

 楽者の観世寿夫は、立ち方基本は、腰の真の一点力を集中させるとい
う言い方をしている。すると、非常に存在感のある立ち方、構えとなる。

 舞台立っているはということ、の場合、前後左右から無限に引っ張られ
ているその均衡の中立つということなのだ。
 逆に言えば前後左右無限にカを発して立つ無限空間を見、しかも
する。それがカマエである。

(中略)

 具体的には、腰の蝶番のところに緊張を集め一本の線のように抽象化さ
れた歩き方をめざす。これがカマエハコビである。
                           (『観世寿夫著作集二 仮面の演技)

 また、野村萬斎さんは、背中感覚について自著で次のように書いている。

 セットや小道具など頼る物が少ない裸舞台で視線にさらされている状況は
、演者にとって苛酷である。
 開き直って胸を張り、背筋を伸ばして腰を入れ、肘を張り膝を軽く折り、顎を
引いて真っ直ぐ前を向かねば
居たたまれない。
 腰から下のどっしりとした安定感の上に、脊髄、延髄、頭継げる背の緊張
感・カの均衡
、即ち訓練された「カマエ」のみがその状況に耐え得るのである。
                          (『狂言サイボーグ』日本経済新聞社)

 何もない、裸舞台でも耐えうるような存在感、声の響きは、こうした見事な背中
の身体文化のなかから生まれている

 (中略)

 私たちは人の声を開くときに、どこで受け取っているのだろうか。もちろん耳で
聴き取った声を理解するにはを働かせているのだが、むしろもっとからだの
のほうで受け取るものなのだろう。

 「腑に落ちる」、「腹に収める」という表現もある。だから、深い響き
もった言葉は、からだにすっと入ってくる

 相手の言葉、思考自分のからだの下腰部のほうに響く感じがあると、
それは真に伝わったという感覚になる。

 こうした声相手のからだを揺さぶり、気の流れダイレタト変える説得力
をもった声、からだに響いてくる声、それを支えるのはからだのにある腰肚感
だ。

 にはその人の構え凝縮されている。ある意味、顔の表情以上に「気」を感
じ取りやすい
といえる。

 ↑以上、引用終わり。

 実は「そけいヘルニア」を患っていたのですが、手術なしで状況が改善しました。

 「背中感覚」が出て来て、体内の圧力バランスが整うと腸がはみ出る「必要が
なくなる」様で、体のバランスと言うのは凄いと思います。

 そう言えば...この所、「椎間板ヘルニア」とか「椎間分離症」なんて方を沢山
お見かけするのですが、その大半は「そんな姿勢していたら当然」と見受けら
れる方が殆どでありました。

 丁度、ご自身の手を金槌でひたすら叩いて「痛い」って仰っているかの様に、
「腰がずれる様」・「椎間が広がる様」なバランスで立ち居振る舞いしておられる
姿で...。

 勿論、「壊れた椎間板」がそのままで復旧する訳でもなく、不幸にして事故に会わ
れた様な場合「手術」も必要ですが、皆様ご自身が姿勢を改善することで「機能回復」
や「良い形での現状維持」が可能だと私は感じています。

 本当に、ちょっとした座り方のバランス...それだけを改善するだけでも良いのです。

 そのお手伝いを春風堂はさせて頂いております。
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by cute-qp | 2008-12-21 00:00