日本人の身体技法 (1)

 本日は、矢田部英正氏 著「たたずまいの美学」より「日本人の身体技法」に関する
エッセンスの部分を引用・掲載させて頂きます↓。

「腰を入れる」という技術
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 上に示した図(図66)は、腰まわりの骨格を正面から写したものである。

 そもそも「腰入れ」という技術は、脊椎最下部の「第五腰椎」と骨盤の真ん中に
ある「仙骨」との拮抗関係にあると、本書は考える。

 骨盤は人体のなかで、もっとも大きく、もっとも強勒な骨格である。この骨盤内部
中心感覚(運動を統率する基軸)が納まっているときには、人体は構造的に強く、
無駄な筋力を使わずに、体力を持続することができる。

 ところがウエストの腰椎部分に「中心感覚」が上昇すると、骨盤に比べるとはるか
に小さい「腰椎骨」のみで上体を支えなければならない。すると腰椎まわりの椎間
靭帯に大きなストレスがかかることは免れない

 ただし脊椎最下部にある「第五腰椎」に限っては、他の腰椎骨とちがって骨盤
内部組み込まれている。つまり「第五腰椎」は他の腰椎骨同様の可動性があり
ながら、骨盤に守られているために強度的にも極めて優れた特性を備えている
上半身の体重を支えたり、動作上のストレスに対しても、「第五腰椎」ないし「仙骨」
部分に運動の基軸が収まっている限りにおいては、人間の運動は骨格の自然な
構造に基づく強度耐久性を発揮する。またこの部分はちょうど、臍下三寸といわ
れる 「臍下丹田」 の裏側に位置している。
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 人間の姿勢は骨盤前傾させようとすると、図67-1に示すように、上体が反射
的に張り出してしまう傾向がある。一見この姿勢は、背筋の伸びた「正しい姿勢」
のように見えるかも知れないが、実際には上体を支える点」が第二腰椎~第三
腰椎へと上昇している。この姿勢は上半身への緊張度が高く、鳩尾を圧迫したり、
肩まわりの筋肉を緊張させるなど、長時間行った場合には非常にストレスの高い
姿勢である。

 図67-2の姿勢はいわゆる「猫背」であり、身体全体がリラックスした姿勢では
あるが、この姿勢も長時間続けた場合には、内臓圧迫したり、座骨神経緊張
させるなど、さまざまな弊害をもたらすことが確認されている。「鳩尾」をゆるめ
上半身をリラックスさせようとした場合には、反射的に骨盤後傾して、このような
猫背姿勢になり易い。

 図67-3に示したのは、いわゆる「上虚下実」の姿勢である。からにかけて
は柔らかくカが抜け、腰部攣曲のピークが脊椎の下の部分、つまり「第五腰椎
から「仙骨」のあたりに位置している。

 それぞれの姿勢の骨盤周辺部に着目すると、まず図67-1の姿勢はウエスト
のかなり高い部分に「くびれ」が生じていることがわかるだろう。図67-2は脊椎
のどこにも「くびれ」の見られない弛緩姿勢であり、正式な坐法の対象にはなり
得ない姿勢である。図67-3の姿勢は矢印で示した骨盤部にゆるやか
な「くびれ」が生じている。

 このくびれを示す腰部彎曲の突起点が、骨盤内部に位置しているのか、それ
ともウェストの部分に上昇しているのかによって、ストレスに対する耐久性
運動合理性といった、身体技法明暗が大きく分かれる。

 「上虚下実」の姿勢に見られる「胸部後攣曲」と「骨盤前傾」を同時的に併用
する技術は、半身と半身の結節点である「第五腰椎」に骨格構造上の強い
拮抗をもたらす。しかしこれは筋肉の緊張ではなく、あくまで骨格の構造的な
拮抗関係である。この骨盤内部に生じる「仙骨」と「上部脊堆」との拮抗関係が、
腰を入れる」と言われるところの具体的な技術内容であると考える。

 したがって「腰を入れる」という動作の技術は、「胸部後攣曲と骨盤前傾を
同時に実現することによって、骨盤内部の脊椎部に生じる上体と下体の拮
抗関係である」と定義することができる。

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by cute-qp | 2008-12-17 00:00